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解説履歴

第9回 “ジャポニズム(日本趣味(にほんしゅみ)”
歌川広重(うたがわひろしげ) 作「亀戸梅屋舗(かめいどうめやしき)」
エミール・ガレ 作「水草文茶入(みずくさもんちゃいれ)」


今から百余年前、海を渡った日本の浮世絵(うきよえ)や陶磁器(とうじき)などが、ヨーロッパで凄(すご)い日本ブームを引き起こした。これは「ジャポニズム」と呼ばれ19世紀末、ゴッホ、ロートレック、モネなど近代芸術に名を留(とど)める大作家達に“新しい芸術(アールヌーボー)”として大きな影響と作品を残した。日本からフランスに送られた積荷の包み紙に使われた北斎(ほくさい)の浮世絵が、その導火線だったことは有名な話。初めてこの絵を見た彼らは、これまでヨーロッパにない日本美の色彩(しきさい)構図(こうず)に感動し、それを作品に取り入れた。中でもオランダ人のヴィンセント・バン・ゴッホ(1853〜1890)は最も熱心で400枚もの浮世絵を収集し、そこから絵の霊感を受け当時のパリ画壇で活躍した。彼が最も愛したのは広重の「亀戸梅屋舗」と「大(おお)はしあたけの夕立(ゆうだち)」の二作で、自ら模写(もしゃ)して油絵(あぶらえ)の具(ぐ)で描き、現在オランダのゴッホ美術館に展示、世界中のゴッホファンの目を集めている。
同じ頃、フランスの静かな町ナンシーでも日本の自然を取り入れたガラス作品が、ヨーロッパに「ジャポニズム」の新しい風を巻き起こしていた。エミール・ガレ(1846〜1904)である。ガラス職人の家に生まれた彼は、たまたまこの町に来ていた日本人画家、高島北海(たかしまほっかい)と知り合った。高島の描く草木蟲魚(そうもくちゅうぎょ)はこれまでのヨーロッパにない、生き生きとした自然を写し出しており、これに強く感動したガレは日本風の自然をガラス作品に取り入れた。やがてその日本的な作風はフランスからヨーロッパに広がり、ガレはパリ万国博(ばんこくはく)を始め各種の展覧会で金賞を取り、今日でも多くのファンの目を楽しませている。作品「水草文茶入」は造形的に照明を入れると、水中の自然の世界が生きる幻想美を感じさせる。

解説 晴明会館顧問・美術評論家 亀田正雄

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