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主な収蔵作品ご紹介
浮世絵作品
歌川広重(うたがわひろしげ)(1797〜1858)「近江八景(おうみはっけい)」

近江国(おうみこく)(現:滋賀県)の琵琶湖(びわこ)は、古くから風光明媚(ふうこうめいび)な所として知られ、多くの詩歌(しいか)や書画(しょが)を作る文人墨客(ぶんじんぼっかく)に愛されて来ました。なかでも、ひときわ優美(ゆうび)さを醸(かも)し出す湖(みずうみ)の南側八ヶ所が、中国・湖南省(こなんしょう)の洞庭湖(どうていこ)および湘江(しょうこう)から瀟水(しょうすい)にかけて見られる景勝地を集めて描かれた「瀟湘八景(しょうしょうはっけい)」画に倣(なら)って、「近江八景」の風景画となって世に送り出されました。
広重36歳、天保(てんぽう)3年(1832)江戸幕府(えどばくふ)の八朔(はっさく)の御馬献上(おうまけんじょう)に同行して京(きょう)に上った折り、目に飛び込んできた山や海、川の趣(おもむき)の感動を「東海道五十三次(とうかいどうごじゅうさんつぎ)」版画で表しました。後、その旅の途中に出合った琵琶湖の温(ぬく)もりがあり安(やす)らぎ溢(あふ)れる光景を心に留(とど)め、江戸初期に関白(かんぱく)・近衛信尹(このえのぶただ)(1565-1614)が詠(よ)んだとされる和歌8首を添えて天保5年(1834)「近江八景」を完成させたのでした。

近江八景地図

八景中の2例

瀬田夕照

「露時雨(つゆしぐれ) もる山遠(やまとお)く 過(す)ぎきつつ 夕日(ゆうひ)のわたる 瀬田(せた)の長橋(ながはし)」

秋の夕暮れに、いにしえから「唐橋を制する者は、天下を制する」と言われた、京の都を守る瀬田川(せたがわ)に架かる重要な橋・瀬田の長橋が見渡せます。その遠くには近江富士(おうみふじ)と呼ばれた三上山(みかみやま)が蜃気楼(しんきろう)のように浮かび上がって見えるのです。

「瀬田夕照」現在

「現在の写真、日本の歴史上で大きな役目を果たしてきた、たそがれどきの瀬田の唐橋(長橋)です。(亀田正司様より写真提供いただきました) 」


粟津春嵐

「雲(くも)はらふ 嵐(あらし)につれて 百船(ももふね)も 千船(ちぶね)も浪(なみ)の 粟津(あわづ)に寄(き)する」

ある晴れた日の吹き下ろす山風(やまかぜ)に、琵琶湖(びわこ)岸東海道(とうかいどう)沿いの美しい松並木(まつなみき)の枝葉(えだは)がざわめき、その心地よい音色(ねいろ)が響いてきます。白波(しらなみ)たつ湖面に粟津ヶ原(あわづがはら)近くをゆっくりと帆走(はんそう)している船の優雅(ゆうが)な情景に心を打たれます。

「日本橋江戸ばし」現在

「現在の写真、琵琶湖(びわこ)西岸、近江舞子(おうみまいこ)松並木の湖岸風景です。
今では見る影もなくなった、過ぎ去った天保(てんぽう)5年(1834)の東海道沿い「粟津晴嵐(あわづのせいらん)」風景画を偲(しの)ばせる素晴らしい眺望(ちょうぼう)です。(亀田正司様より写真提供いただきました) 」

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