葛飾北斎(かつしかほくさい)(1760−1849)「桃太郎と鬼ヶ島(ももたろうとおにがしま)」
北斎は江戸本所割下水(えどぼんじょわりげすい)で生まれた。19歳の時勝川春章(かつかわしゅんしょう)に入門する。その後狩野派(かのうは)、土佐派(とさは)や淋派(りんぱ)だけでなく、当時オランダから入ってきた西洋画(せいようが)も取り入れ独自の画風を打ち立てていきました。彼は30回の改名(かいめい)、93回の転居(てんきょ)などを重ね、90歳の生涯を自由闊達(じゆうかったつ)に生き、あらゆるものを主題に描いて浮世絵(うきよえ)に新境地を開いた画家です。
この軸装(じくそう)作品は、室町(むろまち)時代の頃から庶民に親しまれてきた桃太郎(ももたろう)が鬼(おに)を退治(たいじ)する昔話(むかしばなし)を題材にしたものです。これはもともと5月5日、男の子の節句(せっく)を祝って庭に飾られた幟旗(のぼりばた)なのです。北斎は歌舞伎芝居(かぶきしばい)の役者絵も描いていたので、その技法で子供の成長を力強く表現し、さらに家の外で風になびかせ目立つようにした旗(はた)だったので、美しい色彩で見事に描かれた50歳の逸品です。